泊まって、感じて、Lohasっていいね スーパーホテル

トップ対談

ITの積極的な導入や、「エコ泊」「エコひいき」などお客様と一緒になって取り組む環境配慮活動の推進でホテルの省資源・省エネルギー化に努めてきたスーパーホテル。環境とともに、健康にも配慮した「LOHAS」という新たな価値観が徐々に広がりを見せる中、2011年4月には環境省の「エコ・ファースト企業」にも選ばれ、環境保全に関するホテル業界のトップランナーに認定されました。スーパーホテルの環境経営にとって今後何が必要になるのか、環境経営に精通している関西学院大学総合政策学部順教授の松村寛一郎氏をお迎えして対談を行いました。

山本 梁介/松村 寛一郎 氏

本業を通した息の長い支援でホテルとしての社会的責任を果たしていく

松村
このたびの「東日本大震災」では、大規模な津波により東日本の沿岸部を中心に甚大な被害が発生しました。被災地域でのスーパーホテル各店舗も大変だったのではないでしょうか。
山本
今回の地震で影響があった店舗は、仙台・国文町店と仙台・広瀬通り店、水戸店の3店舗でした。地震があってすぐに本部の従業員約30人が現地入りし、停電や余震が続く中、お客様に対してできるだけのことをしようと不眠不休で対応しました。幸いにも直接の人災はなかったのですが、従業員の家族に被災した方がいたことから店舗の方にお迎えをしたり、地域の住民に対して、客室、ロビーともに無料で開放し、ストックしていた水や食料を少しずつ分けてご提供したりしました。また、被災地では水が貴重でしたので、当社の「力水」とともに、歯ブラシなどのアメニティを現地にお送りし、全従業員、パートナー会社と共同で義援金も寄付させていただきました。
松村
迅速な対応でとてもすばらしいですね。危険だからといって閉めてしまったホテルもあった中、駆け込める場所があったことは地域の方にとって非常にありがたかったはずです。しかも、それを無料で開放されたのですから、ホテルとして地域への社会的責任をしっかりと果たされたと思います。今朝、朝食を頂いている時に、おそらく被災地から来られたのだと思いますが「一時災害の事を忘れることができた」と仰る方がいて、ホテルは体だけでなく心も休める場所なんだと改めて感じました。今後、復興に向けた支援としてはどのようなことをお考えでしょうか。
山本
本業を通した息の長い支援が必要だと考えています。被災地から避難されてスーパーホテルにご宿泊いただいている方で、特に小さなお子様を抱えた方やご高齢の方にはできるだけ気を配って対応することが大切です。普段であれば想定できないようなご要望にも「できない」とは言わず、どうすればご要望にお答えできるか一緒になって考えて差し上げる。非常時ですから、そうした姿勢が大切だと思います。
松村
私がスーパーホテルを知ったのは2010年の「関西エコオフィス大賞」でした。審査員として、同賞に応募してこられた企業の環境配慮活動を拝見する中で、環境に配慮したホテル作りを熱心に進めておられる御社に注目しました。このほど、「エコ・ファースト企業」にも認定されたと伺い、まさに「環境に配慮した企業が利益を上げる」というマイケル・ポーターの仮説を具現化しています。
山本
ありがとうございます。スーパーホテルでは、環境経営として大きく3つの方針で取り組んでいます。1つは、省エネルギーへの対応です。例えば電力の場合、客室の冷暖房は集中型から個別式の省エネルギー型エアコンに変更したり、電球は白熱球からインバーター蛍光灯、いまはLEDへの切り替えを進めたりしています。2つ目はIT化の徹底です。予約管理をはじめ、チェックイン業務、顧客管理、清算業務などの機能をシステム化するとともに、各店舗にはサーバーを設置せず、データセンターのホストコンピューターと回線でつなぐことにより、大幅な省資源・省エネルギー化を実現しました。そして3つ目は、ISO14001の取得を各店舗で進め、環境意識の啓発を行っているところです。
松村
ITを積極的に使ってきちんと利益を上げながらも、環境に対する配慮を欠かさない。環境経営がとてもいい形で回っているし、マネジメント化できていると感じます。
山本
何よりも大切なことは、お客様と一緒になって環境活動を進めることだと考えています。当社では、1年間に約330万泊のお客様が出入りされていますから、例えば「エコ泊」を通して宿泊時のCO2排出量を25%オフセットさせていただく。こうした地道な取り組みのおかげで、2010年度のCO2総排出量は18,649tとなり、2009年度比12.9%を削減することができました。
松村
「エコ泊」については、環境省の平成22年度カーボン・オフセットモデル事業として、ツイッターを利用したキャンペーンを実施しておられました。宿泊客の環境意識を高めつつ、CO2排出量削減にも貢献する取り組みとして高く評価できます。ホテルでぐっすり眠り、翌朝しっかりと朝食をとって、リフレッシュした状態で外出していただく。こうしたスーパーホテルの良さは保ちつつ、さらにITを使ってできる環境活動はまだまだあると思いますので、次の展開に期待しています。

女性を中心に浸透するLOHASビジネスマンにも広げていきたい

松村
御社では、環境への配慮とともに、快適な眠りや健康朝食、天然温泉などの提供を通じお客様の健康面にも配慮した「LOHAS」というコンセプトを掲げられ、2009年にはLohas・JR奈良駅店をオープンされました。
山本
LOHAS仕様の客室は、天井に調湿効果のある珪藻土を塗ったり、壁にケナフの壁紙を使ったりしています。天然温泉にはヒーリング効果を高めるといわれるオリーブの種を再利用した炭を敷き詰め、朝食では地元で採れた旬の野菜サラダなどを提供しています。LOHASは特に女性客からの反応が良く、2011年3月にオープンした旭川店では、女性客の割合が通常約1割のところ、約4割で推移しています。おかげさまで、市長や地元企業のトップの方から旭川店を見学したいとのお申し出もいただいたところです。
松村
市長や企業のトップの方の意識啓発につながればいいですね。旭川店が成功モデルとして話題になれば、スーパーホテルのLOHASがますます注目され、浸透していくのではないでしょうか。ぜひ他店にも展開していきたいです。
山本
そうですね。ただ課題もあります。実はビジネスマンの方にはあまりLOHASの考えが浸透していないと感じています。まずLOHASそのものをご存じない方がまだ大勢いらっしゃるというのが現状です。
松村
LOHASのコンセプトは変えなくても、相手によって伝え方を変えるコミュニケーションの工夫は必要です。「エコと健康」と言い換えたり、あるいはもっと伝わりやすい言葉に置き換えたりする必要があるかもしれませんね。「環境」はある意味当たり前になってきていますので、ビジネスマンの方には「健康」に過ごすことの大切さをより知っていただく活動がよいのかもしれません。新たなブランド価値を創造していく意味でも魅力あるキーワードだと思います。

循環型社会の実現に向けシンガポール、台湾にもLOHASの考えを

松村
スーパーホテルは国内で全国100店舗を達成し、今後は海外への進出も検討されていると伺いました。具体的にはどのあたりの地域をお考えでしょうか。
山本
いくつかの国と地域で海外展開を検討していますが、近いうちに実現しそうなのはシンガポールです。この国ではほとんどの土地が国有地ですから、まずは運営面でのお手伝いをさせていただく方向で話を進めています。
松村
シンガポールでは現在、水の問題が深刻ですね。これまで水源のないシンガポールは、水の大半を隣国マレーシアからの輸入に依存してきました。ところが、昨今の世界的な水需要の高まりを受け、マレーシア政府が水道料金の大幅な値上げを要求したため、シンガポール政府は水を自前で賄うための研究を大急ぎで始めているそうです。当面重要なのは節水です。特に水洗トイレは大量の水を消費しますので、水不足をより一層深刻化させてしまいます。そこで今注目されているのが「バイオトイレ」です。排泄物におがくずを混ぜて発酵させ、有機物として安全な肥料に変える仕組みなので、水を流さないトイレとして日本国内でもいくつかの観光地で実験的に導入しているそうです。
山本
水を使用せずに、後々肥料にも使えるのであれば無農薬野菜の栽培などにも一役買うわけですから、それはまさに循環型の仕組みですね。
松村
水資源もエネルギーも有限ですから、循環型社会を実現していくために、ぜひホテル設備のなかにもそうした仕組みを取り入れていただければと思います。今後の展開にも期待しています。本日はどうもありがとうございました。
エコ・ファースト制度

エコ・ファースト制度

京都議定書の目標達成に向けた地球温暖化対策などの環境保全に対する目標や取り組みを環境大臣に約束する制度で2008年4月に設けられた。認定された企業は、業界のトップランナーとして他の模範となる活動をすることが求められます。