泊まって、感じて、Lohasっていいね スーパーホテル

第三者意見

事業活動を通じて社会に変革をもたらす企業に

3つの「ロハス」の軸

スーパーホテルの2016年のレポートは、「ロハス」をより前面に据えた内容になっています。「五感で感じるロハス」の章では、壁面緑化、ヒーリング音楽、オーガニックコットンのタオル、「地産地消」のご当地メニューなど、新しいロハスの取り組みが紹介されています。

「環境を守るロハス」の章では、客室でのリサイクルカーペットの使用、バスタブの満水ラインの工夫などの新しい環境配慮を知ることができます。特に、ECO泊(インターネット予約・宿泊者のCO2排出量の100%カーボンオフセット)の取り組みによって、2009年と比較して、売上高が1.7倍になっているにもかかわらず、CO2排出総量は3割以上削減されています。

「人を元気にするロハス」の章では、宿泊客や従業員に元気を提供する取り組みが紹介されています。自身の経験からも、ホテルでの接客の印象は記憶に残り、ホテル選択における重要な要因となります。1宿泊者としての経験では、スーパーホテルでは、いつもマニュアルではない温かい言葉をかけていただいたり、部屋にメッセージを置いていただくなど、仕事一色の出張に思い出を添えてくれます。これも、2016年レポートで紹介されている「スター制度」、「スーパーホテルグランプリ」、接客指導専門家養成、アテンダントオリエンテーション研修などのしくみが、従業員のモチベーションアップと「自律型感動人間」の育成に、実を結んでいる成果だと思います。また、社員の多様なキャリアパスの充実や、対話を重視したユニークな従業員能力育成ツールの活用などには、顧客満足の前提には社員満足、という経営者の考えが具現化されています。

選択集中&妥協しないサービス

スーパーホテルでは、顧客層を出張族に絞り、「安心・清潔・ぐっすり眠れる」に特化し、不要なサービスを削ったビジネスモデルを軸にしながらも、ビジネスマン・ウーマンにうれしいサービスやロハスの追求には妥協しない、という姿勢が貫かれています。それは、3つのロハスの様々な取り組みに表れています。高い質のサービスであっても宿泊が重なると慣れてしまう移り気な宿泊客にも、「感動」を持続させる新しい工夫があり、それがリピーターを満足させている秘訣だと思います。インターネット上での宿泊者の声でも、「ベッドのクオリティがビジネスホテルの中で圧倒的に高い」「コスパのいいホテルとして、ホテル選びのベンチマークとなる」といった声が聞かれることも納得です。

ステークホルダー・ダイアログでは、「多様性(ダイバーシティ)」が取り上げられています。筆者は今、アメリカのカリフォルニア大学アーバイン校にいますが、世界中から集まる学生や教員達の相乗効果に、ダイバーシティのパワーを感じています。働き方を含むダイバーシティから得られる様々な視点は、次の「感動」につながる種になることが期待されます。スーパーホテルが、今後、どのような驚きを提供し続けてくれるのかが楽しみです。

「地域」からの社会変革

これからの日本では、「地域」が重要なキーワードの1つです。スーパーホテルの2016年のレポートからは、様々な地域創生の取り組みが見えます。表紙での「地域全体に貢献する企業」の表明、朝食での「地産地消」、メガソーラー事業、地域貢献としてのホテル開業などです。トップ対談でも「まちづくり」が話題になっています。

これらのスーパーホテルの取り組みに加えて、スーパー・コート事業にも着目したいです。今の日本は、人口ピラミッド・世帯構造などの急速な変化のスピードに、社会のしくみが追いついていないのが現状です。スーパー・コートは、ホテル業のノウハウを活かした介護事業として、来たる超高齢社会を見据え、要介護度の改善などの様々な取り組みや研究が行われています。2016年レポートでは、その一部として、スーパー・コート独自のトレーニング(SC-Fitプログラム)や経営品質賞の受賞実績が紹介されています。スーパー・コートは、地域医療と一体となって、高齢者の生活を支え、改善し、社会のしくみの変革を起こそうとしている、とも言うことができると思います。今後のロハスレポートにおいても、関連企業であるスーパー・コートを含めたグループ全体の取り組みをもっと知りたいと思うステークホルダーも多いのではないでしょうか。

ビジネスモデルと「研究熱心」が生む、中長期的な価値創造に向けて

スーパーホテルやスーパー・コートが価値を生み続けている秘訣は、そのユニークなビジネスモデルに加えて、「研究熱心」という点にあると思います。眠りに関する研究、天然温泉や健康イオン水に関する研究、介護サービス向上の研究、介護スタッフの行動分析の研究など多くの研究がなされており、認知症ケアの研究では学会賞も受賞されています。これらの研究成果は、様々な取り組み、プログラム、サービスに還元されています。

スーパーホテルやスーパー・コートの、社会貢献を含めた広い意味でのビジネスモデルは、経営(マネジメント)の対象が幅広く、地域との連携も必要で、そのしくみは一度作れば終わりではなく、日々創り続けなければならないものでしょう。「地域」の課題は、ある地域の成功例が他の地域で通用するとは限らない、という難しさもあります。近未来を見つめ、介護・福祉・就労・ホテル・まちづくりなどの連携をいかに図っていくか。従来の企業経営とは異なるこのような流れを中長期的な企業価値創造にどのように結びつけるか、そのビジネスモデルを支えるガバナンス、リスクと機会なども明確にし、「事業を通じて社会に変革をもたらす企業」であり続けてほしいと願っています。

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阪 智香氏

関西学院大学商学部教授、カリフォルニア大学アーバイン校客員研究員

商学博士。現在、日本学術会議連携会員、日本社会関連会計学会理事、全国ビジネス系大学教育会議理事等。著書に『環境会計論』(東京経済情報出版)等。日本会計研究学会学会賞等受賞。