泊まって、感じて、Lohasっていいね スーパーホテル

第三者意見

環境への強い思いを感じる事業活動をさらに広げ、これからも業界のリーダーとして進化されることを期待

今回意見を述べさせていただくにあたり、初めて報告書に目を通しました。読後感は「次回の出張ではぜひ泊まりたい!」。スーパーホテルという名称と黄色と青の看板から、効率を重視する無機的なビジネスホテルをイメージしておりました。しかし、報告書を拝見し、東京八重洲のLohasホテルを見学させていただき、リラックスできる癒しと環境負荷削減を同時に達成している本気でエコなビジネスホテルであると認識を新たにしました。

今やグローバルホテルチェーンではホテルの建物の省エネ設計、連泊の際のタオルやシーツの再利用によるCO2と水使用の削減などのエコ活動は定番化されつつあります。しかし、それ以外のサービスでは資源の浪費やムダな使い方が散見され、エコは形式的と印象を受けるケースの方が多いです。山本会長もご指摘の通り、日常から離れた憩いや贅沢もサービスの一環であるホテル業にとって、エコは生活臭あふれるケチ臭い活動と思われるリスクもあるからです。

これに対しスーパーホテルは顧客満足と環境負荷削減のジレンマ解決を「ロハス」のコンセプトに見出し、「がまんしないロハス」として顧客アピールにつなげています。「LOHASヒストリー」を読んでなぜそれができたのか納得しました。環境モデル都市となった水俣市の要請をきっかけに、ロハスを提唱する大和田順子氏をはじめとしたステークホルダーとの出会いから、彼らの主張やニーズを自分事として受け止め、試行錯誤しながらそれをホテルビジネスに取り込み、環境大臣認定のエコファースト企業に選出されるに至った歴史を作ってきたからだといえます。またその過程で、ロハス活動の重要性と楽しさが従業員の間でシェアされ、その楽しさが顧客に伝わりさらに活動の広がりにつながる、という好循環が見られます。

その結果が、宿泊者一人あたりの電力使用量や水道使用量、およびトイレットペーパーや歯ブラシといった廃棄物の大幅削減などの環境負荷削減と、顧客にアピールするロハス価値の同時提供につながっています。具体的にはヒノキの香りに満ちたフロント、調湿機能のある珪藻土やケナフなど天然素材の内装材、オーガニック素材を使ったアメニティやタオルなど。ちょっと贅沢なサービスなのに環境負荷が少ない。これは最近関心が高まっているエシカル消費※の立場からもとても共感できます。環境負荷削減だけでなく、地域創生の核と自らのホテル業を位置付け、地方活性化につなげている出店戦略は、社会課題解決とビジネスの両立面で素晴らしいです。

つまりこの報告書からはぜひ泊まりたいと思うようなメッセージがしっかり伝わってきます。しかし、スーパーホテルの取り組みを企業の取り組みとして評価するとなると幾つか課題も見えてきます。

国際社会では、2015年には気候変動問題で2℃未満に気温上昇を抑えるためのパリ協定と、2030年までに持続可能な社会構築を目指す国際的枠組みのSDGsという二つの枠組みが合意されました。スーパーホテルの現在の取り組みはこうした枠組みの方向性理念に合致していますが、2030年、2050年に向けては実際にどのような戦略、計画でこれに応えていかれるのでしょうか? また報告書ではCO2や廃棄物の実績の数字は開示されていますが、将来の目標数字は見当たりません。そしてトイレットペーパーや歯ブラシは6割以上と驚異的な削減結果が開示されていますが、どうやって達成できたのでしょうか? 今後の計画はどうなっているのでしょうか?

つまり、過去と現在はわかるが、将来のイメージはぼやけています。野口健さんと会長の対談からも環境への強い思いを感じるので今後も活動を広げていくものと推測されますが、それが実際に読者に伝わるよう、将来ビジョンと目標を今後はしっかり開示されてはいかがでしょうか?

2020年のオリンピックに向けてインバウンドの観光客の増加が予測される中で、日本のビジネスホテルの環境価値を世界に広めるためにも、また宿泊客に「がまんしなくても楽しく環境負荷は削減できる」体験を日常生活に持ち帰って生活者の環境配慮を底上げしていくために、明確な長期ビジョンと目標を示し、業界のリーダーとして活動を進化されることを期待しています。

※エシカル消費:エシカル(ethical)とは倫理的、道徳的なという意味。人権や貧困問題、環境問題を引き起こさない、あるいは解決するような手法で生産された製品や農産物の方を選んで買おうという取り組みで、東京オリンピックの調達などでも注目を集めている。

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河口 真理子 氏

株式会社大和総研主席研究員/NPO法人サステナビリティ日本フォーラム共同代表/グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン理事/エシカル推進協議会理事

気候変動問題、水資源や鉱物資源不足、森林減少砂漠化、生物多様性の喪失、グローバルな貧富の差の拡大の問題…人類が直面する課題をどう乗り越えて、いかに持続可能な社会に作り替えていくのか。そのために企業の立場(CSR)、投資家の立場(ESG投資)、生活者の立場(エシカル消費)からすべきことは何かなどをテーマに研究、提言、発言をしている。