01. 効率と満足の二兎を追え

 「清掃部門を事業化しよう」

 2012年から4年間、走り続けた努力が全て報われた。山本梁介会長の言葉に、そう感じた。2016年、株式会社スーパーホテルクリーンが設立され、中根昌幸はその代表取締役専務に就任した。

 2012年当時、100店舗を超えたスーパーホテルは、大きな問題に直面していた。

 ひとつは理念の浸透。企業の規模が拡大すれば、関わる人員も比例して増える。体が偏って肥大すれば末端まで血液が行き渡らず冷たくなってしまうように、理念に込めた思いや熱が現場の隅々まで届きにくくなる。それでは健全な成長とは言えない。

 「顧客満足度を向上させるには、全スタッフに理念の浸透が不可欠だが、この規模でそれを実現するには?」と全社員が自問自答しながら試行錯誤を繰り返していた。

 もうひとつの問題は、コストダウン。企業の成長に比例してコストは増える。うまく削減しなければ成長を鈍化させてしまう。

 理念の浸透による顧客満足度向上と、コストダウン。この2つは相反する問題だった。

 「コストを下げつつ、清掃の質を上げる方法はないだろうか」

 山本会長からの問いに、中根は言葉を詰まらせていた。スーパーホテルは「安全・清潔・ぐっすり眠れる」ホテルであることを掲げている。その鍵を握るのが、清掃なのだ。ベッドや枕がいくら良いものでも、客室が汚ければお客様に「我が家に帰ってきた」と感じていただけない。感動はおろか、満足すら望めない。建設企画部の清掃部門に所属していた中根にとっても、清掃のコストダウンと品質向上の実現は頭を悩ませている課題だった。

 なぜなら、一般的にその両者の実現は同時に成り立たないのだ。ホテル清掃の中で大きなコストは人件費。それを削れば、清掃員一人あたりの負担は増え、品質が低下するのは明白。だからといって、なにもしなければ、ホテルが増えるに従いコストも増え、清掃の品質も低下するだろう。状況は悪化していくのだ。自ら考え、行動することが、スーパーホテルでは求められる。失敗は責められない。あきらめず、成功するまで挑戦するのであれば。つまり、これは会長から、中根へ「挑戦せよ」というパスなのだ。この課題を解決しようと挑戦する中で、中根と清掃部門が成長する。その可能性を感じているからに違いない。中根は答えた。

 「任せてください。その方法、見つけ出します」


 

02. Faith

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