02. Faith

 清掃業務は、専門業者へ外注されていた。中根はその会社のトップとの会談を最初に行った。スーパーホテルが考える顧客満足について、その向上のために、いかに清掃が重要かを説明した。パートナーとなる業者にも理念を浸透させようと考えたのだ。しかし、なかなか効果は出なかった。トップから現場に伝わるまでには様々な人間を介することになる。時間がかかれば熱は冷め、消えてしまう。「このやり方では時間が足りない」と中根は実感し、自社のやり方にヒントはないかと振り返った。

 スーパーホテルでは、理念を『faith』という小さなカードにまとめ、毎日の朝礼で全員が読み合わせをする。そして業務中はfaithを常に携帯し、全ての行動指針とする。だから、ぶれない行動ができるのだ。

 「同じように現場の近くで理念を説かなければ、すぐに効果は出ない」

 と中根は行動の修正を決め、まず直営店の清掃を自社で行うことにした。そこの現場では、faithを読み込み、毎日中根が大切さを伝えることにしたのだ。「自分たちの仕事が、お客様の笑顔に直結している」と。

 効果は、徐々にあらわれ始めた。

 お客様へのアンケートの「清潔感」の項目が、上昇し始めた。「接客」もいい成績を収めるようになった。

 「清掃スタッフも、お客様を笑顔にする大切な人材。客室のていねいな清掃はもちろん、気持ちの良い挨拶、感謝の気持ちを忘れないように」と話し続けた。その言葉に共感したスタッフが、行動に移し、それがお客様の心に届いたのだ。そして結果が、またスタッフのモチベーションを刺激した。

 「お客様に喜んでいただくって楽しい」

 という声が広がっていった。

 清掃の仕組みも見直した。通常は一人で行う清掃業務を、二人ペアに変更した。ベテランが新人を教育しやすい。品質のチェックも客観的に行える。ベッドメイキングなどは協力すれば、体への負担も減らせ、時間も短縮できるようになる。結果、コストダウンがはかれるのである。なにより、いたわり合え、仕事が楽しくなる。

 「もっと時給が高いホテルもあるけど、スーパーホテルで働くのが楽しい」

 そんな言葉を現場のスタッフからもらえたときは、本当に嬉しかった。

 仕組みと成果の報告をを聞いた会長から、事業化の話が伝えられた。成果はもちろん、その手法・仕組みが認められたのだ。


01. 効率と満足の二兎を追え

03. 未来を担って立つ

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